2012年10月2日火曜日

安如砺先生と伝統曲

久し振りに、安如砺先生のお別れコンサート「二胡芸術教学成果展演」の映像を観ました。
DVD
安如砺「二胡芸術教学成果展演」

安如砺先生は二胡演奏家で
中国音楽学院の教授。劉天華の直弟子である蒋風之から指導を受けられた方です。姜先生もご指導して頂いた恩師なのですが、2010年に癌を患われて、71歳でお亡くなりになりました

写真でも分かると思いますが、安先生はとてもお痩せになられていしまい、その姿が痛々しいです。
コンサートでは中国音楽学院の先生方や御弟子さん、姜先生が演奏され、最後に安先生が「漢宮秋月」を曽徳維先生や華夏民楽団と一緒に演奏されました。

椅子に座る時や立ち上がる時は支えがいるくらいなのですが、安先生の表情はしっかりとされていて、二胡の音色も表現も細やかで素晴らしいものです。人生最後の演奏ならば、無意識に感情が入り過ぎてしまいそうですが、そういうものは全くありません。ただ、その主人公の悲哀を表現することに集中している、といった印象を受けました。

「漢宮秋月」は難しい曲だと思います。
習ったのは7年前くらいでしょうか。姜先生から「王宮にお嫁に行ったら、王宮から出られないのよ。もう実家には帰れないの・・・。その悲しみを表現して」と言われました。しかし、それまでこういう曲を習ったことが無かったので、先生と同じように上手く表現できませんし、その当時はレッスンを録音していなかったので、文章で書き留められないような細かな表現を、家に帰るまで記憶することもできませんでした。

姜先生は、私たちが全く曲を理解していないので、「はぁ・・・、こういう状況は今の人にはわからないのね・・。」とため息をつかれて、途中でこの曲の指導を諦めてしまわれました。

その後、私は様々な二胡の伝統曲を習い、また多くの演奏家の演奏を聴いてきたので、以前より「漢宮秋月」を理解できるようになったような気がします。

安先生の演奏を聴いていると、曲の後半から、あるところに視線がいってしまいます。



曽先生の左隣に座っている綺麗な女性が、安先生の後ろ姿をじっと見つめながら演奏を噛み締めながら聴いているのです。眉間に皺を寄せて、先生の独奏の部分で音楽に合わせて頷きながら、噛み締めるような表情です。
「安先生の演奏はこれが最後・・・・。もう演奏を聴く事はできない・・」と心の中でつぶやいているように見えます。

中国音楽学院では伝統曲の指導に力をいれている、と姜先生から聞きました。
しかし、多くの若い演奏家や指導者は、伝統曲をそれらしく演奏することと指導することができない、そうです。

やはり安先生の存在は大きかったのだな、と実感します。
















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