2016年1月27日水曜日

悲歌・・処世難

劉天華の「悲歌」はメロディーが美しいので、演奏をしていると気持ち良くなって、流れるように演奏してしまいます。でも、実はこの曲には「処世難」というタイトルもあります。「生きていくことが難しい」ということです。そういう曲を、ただ流れるように演奏してしまってはいけませんよね。

どの作品でもそうですが、作品のお勉強は大切です。作者の生きていた時代や制作当時の作者の状態を知ることから、曲の内容や背景が見えてくると思います。劉天華の場合も、彼が生きていた中国の実情を知って、彼の心情を推し量らないといけません。

劉天華は1895年に生まれて1932年で病気で亡くなりました。若くして亡くなってしまったので、現在楽譜が残っている二胡の曲は10曲だけなんですよ。

彼が生きていた時の中国は、こんな時代です。

1895年:日清戦争で清は敗退。
 イギリス、ロシア、ドイツ、アメリカ、日本、による中国の半植民地化が進む。
1911年:辛亥革命。各地の省が清から独立
1912年:中華民国樹立。中国の君主制は廃止
 蒋介石が中国全土を支配。
1921年:中国共産党成立
1927年:「悲歌」完成
1931年:大日本帝国が満州国を独立させる。

まさに激動の時代ですね。劉天華の作品には常に不安と葛藤、奮闘の心情があるように感じます。劉天華は、中国の未来や中国民族音楽の将来に不安を抱きながらも、希望を失いませんでした。37歳で亡くなるまで、積極的に西洋音楽や様々な中国民族楽器を学びながら、教育や作曲等に精進した偉大な音楽家です。


劉天華の郷里、江陰市を巡る記事↓

http://home.inet-osaka.or.jp/~officea/ongakutabi1tenka.html

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